染矢 奈樹
法学研究科 政治学専攻 修士課程2年(2024年度現在)
私は政治思想史を専攻し、明治期日本におけるドイツ政治思想の受容について研究しています。その背景にあるのは、国際比較の視座から、グローバルな文脈のなかで近代日本の成り立ちを解明する、という問題関心です。今日の学問においては、高い専門性と同時に、1つの領域にとらわれない学際性を有する研究が強く求められています。
法学研究科には、多岐にわたる分野を専門とする教員のもとで、専門的かつ学際的な学びに基づいて独自の研究成果を生み出す環境が整っています。研究を進めるにあたっては、指導教員からの論文指導とともに、他分野の教員からも多角的に指導を受けることが可能です。また、「合同演習」・「プロジェクト科目」のような授業の設置やシンポジウムの開催により、国内外の研究者を招聘して議論する機会が豊富にあり、隣接領域についての知見を深めることができます。加えて、日頃から分野を越えた大学院生同士の自由闊達な交流がおこなわれ、開かれた研究空間が形成されています。そしてこうした専門的で複眼的な思考を培う日々の学術活動は、大学図書館の充実した蔵書や史料によって支えられています。
私にとって学問とは、関心のある事柄について理解を深めつつ、他のさまざまな学びや気づきとの間に繋がりを見出すことで、物事を立体的に把握し、より大きな絵を描いていく営みです。多様な最先端の学知に触れながら自分の専門について研鑽を重ねたい方に、ぜひ法学研究科をおすすめします。
佐藤 太樹
法学研究科 公法学専攻 博士課程3年(2024年度現在)
私の研究テーマは、憲法学と官僚制です。従来憲法学では、官僚機構の民主的コントロールを確保するために内閣の機能強化を積極的に推進していく立場が主流でした。しかし、政治主導と民営化が同時に進行する状況のなかで、改めて憲法学の観点から、官僚機構の規範的役割を再検討する必要がある、と私自身は考えています。
学部生の頃に色々と憲法学の論文を読んでいるうちにその魅力に引き込まれてしまい、いつの間にか研究者を志すようになりました。現在は博士課程に在籍し、定期的に研究成果を論文の形で公表しています。研究生活は思いのままにならないことばかりですが、それでも「本物の研究者になりたい」という思いは今も大切に
しています。
大学院には合同演習という科目があります。そこでは院生と教員が一堂に会して、院生の報告が行われます。合同演習はいつも真剣勝負の場所で、自分自身の研究を真摯に見つめ直すことが求められます。報告後の質疑では、上手く返答できないこともあります。しかし、先生方から頂いた問いかけの一つ一つに、じっくりと向かい合うことができるのも、院生の特権の一つのように思います。
昔、「学問の完成に向うべき情態」ということを書き残した先生がいます。それをみると、いつも頭の下がる気持ちになりますが、私のような若輩者にも何かいえることがあるはずだと信じて、励みの言葉にしています。
一木 大朔
法学研究科 民事法学専攻 修士課程2年(2023年度時点)
私は、現在、法学研究科で民法、特に債権分野について学んでいます。法学研究科へ進学した理由は、学部時代から漠然と「研究」というものに興味があったためです。元来、何かを勉強することは好きだったのですが、法学研究科に入学して実感したことは、「勉強」と「研究」とは全く異なるベクトルの作業であるということでした。「勉
強」は疑問点について学習し、その答えを自分の知識として吸収する作業であるのに対し、「研究」はそこからさらに、まだ誰も解決できていない疑問について、自分なりに答えを探していく作業だったのです。
この点、法学研究科では「勉強」だけでなく、「研究」を行うにあたって、恵まれた環境が整っていると感じています。修士一年生時のカリキュラムは、授業が中心となっており、そこでは、法律学の知識を「勉強」するだけではなく、報告の機会や様々な先生方とのコミュニケーションを通じて、「研究」とはいかにして行っていくのかという点についても学ぶことができます。そして、実際に研究をするにあたっては、国内外問わず、多くの研究資料がそろっており、自らの興味関心を深めていく環境が整備されています。
法学研究科では、これまでの「勉強」の枠には収まらない、考え抜く日々を過ごすことができます。皆様もこの貴重な経験を、ぜひ法学研究科で体験してほしいと思います。
許 楽
法学研究科 政治学専攻 博士課程3年(2023年度時点)
気づけば五年の月日を法学研究科で過ごしています。
思い起こせば、大学院への進学という志の原点は、学部時代の日本の政治経済史の授業中に抱いた、経済成長の背後にある国家と労働の関係というテーマへのふんわりとした興味でした。卒業後、来日が叶い、地域研究の伝統を有する法学研究科にて、学問を修めることになりました。私は、「社会主義国」中国における失業対策の政治過程をテーマに、修士課程の2年間、次いで博士課程の3年間、勉強と研究を続けてきました。アカデミックな世界に浸かればつかるほど、学術的に見て自身がいかに非学であるかを実感しつつも、
かえって政治学という視点から世界を観察し分析することの楽しさを感じるようになりました。
私にとって大学院とは、自身の無知とそこから生まれる好奇心に真摯に向き合うことのできる場所です。そして法学研究科は、それを追求するための最善の研究環境を提供してくれます。指導教授はもちろんのこと、すべての先生方は、いつも啓発的な指導と意見を与えてくれます。日々切磋琢磨する院生仲間からも、多くの刺激とインスピレーションを得ています。このほかにも、図書館に収蔵される豊富な史料、日本内外の著名な学者を招聘する多彩なシンポジウム、さらには海外調査や研究生活を支えてくれる塾内の研究助成
制度――これらすべてが私の研究生活を支える強固な地盤でありながら、視野と思考を拡張させる弾力性のある空間を提供しています。
私は、この最高の環境のなかで自身の無知と向き合い、それを糧に勉強と研究を続けられることに幸せを感じています。