過去に学び、現在を知り、未来を志向する

小川 有希子
帝京大学法学部 助教

小川 有希子 氏

 私は、ロースクールを経由して、本研究科博士後期課程に進学し、学問の世界に入りました。法曹のように、目の前の人を助けることはできませんが、今と未来を生きる人びとにとってのよりよい環境を整えるために、自分にできることを追求しています。憲法学の視点からみた「よりよい環境」とは、一つに、民主主義がしっかり実践されている状態です。コロナ禍では、政策決定への専門家関与のあり方が問題になりました。昨今、重要な事柄が、市民を置き去りにしたまま、次々と閣議決定されているような状況もみられます。こうした課題に対応するための、望ましい統治構造や制度形成過程のあり方について、主に日仏比較を通して研究をしています。

 他方で、私の研究は、法体系全体のほんの一部分に過ぎません。私たちが直面する課題に対して、すべての研究者が、それぞれの観点から、多様なアプローチで取り組んでいます。一人ひとりが最先端の研究をしながら、互いに敬いあい、ときに時間軸や分野の垣根を越えてつながることで、法体系全体が改良されていく様には、大きな喜びと魅力があると感じます。とりわけ、慶應義塾大学大学院では、院生時代から、世界トップレベルの先生方、先輩方、そして、それぞれの分野を担っていくであろう仲間たちとの交流のなかで、自身の研究を客観的に捉える機会が得られます。皆さんの研究活動を大きく推進するサポートが、ハード・ソフトの両面で整備されているといえるでしょう。

*主要業績:「NGOと政策形成」横大道聡ほか編著『グローバル化のなかで考える憲法』(弘文堂、2021年)312-329頁等

自分の限界を設定しない

下川 祐佳

下川 祐佳 氏

 私はロサンゼルスに本拠を置く非営利・独立系のシンクタンクに務めています。年間を通じて米国、アジア、中東などで国際会議を主催しており、グローバル・リーダーを招いて、世界的課題の解決を目指して取り組んでいます。

 修士課程では民事法学を専攻し、田村次朗教授の指導の下で競争法(経済法)を専門としました。特に、米国の競争法と知的財産法の関係性についての研究に関心があったため、大学院在学中に一年留学もしました。

 留学先のカリフォルニア大学バークレー校・ロースクールは、知的財産分野での評価が高いため、非常に有意義な時間を過ごせました。特許法の教授の下では最新の判例研究し、在学中に論文を執筆しました。また、ロースクール修了後は司法試験も受験をし、ニューヨーク州弁護士資格も取得するなど、多くのことに挑戦することができました。米国での経験を生かし、帰国後は日本と米国の競争法に関する理解を深めました。各国の競争当局の動きや法規制を研究することで、問題の所在を明確化することもできました。

本研究科の魅力は、自分への限界を設けることなく、様々なことに挑戦・研究できる点です。研究分野および分野外においても、世界にはまだ解決すべき問題が多く存在します。それらの問題をどのように解決し、取り組み、そして社会で活躍していくべきかを本研究科で学ぶことができました。

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